「明日香、行くわよ。」
決戦の日の朝は、そんな明日香の呟きから始まった。
その明日香の決意が、果たして今日の決戦のためのものなのか、それともその先に待つもう一つの戦いのためなのか、それは・・・わかんないほうが、いいよなきっと。
だいたいその先の戦いっていったいなんやねん。
Sentimental
Midnight
第十一章
監視者、とたいそうな名を名乗ってはいるが、彼らの組織はあまり大きくないようであった。
少なくとも、今のところは。
潜入した彼らのアジトが、それを示していた。
潜在的な問題とすれば、監視者、と呼ばれる連中は世界各国に幾人もいるらしいのだが、今現在はまだ覚醒しているものが少ない。
その上覚醒したとして運命に従うものたちばかりでなければ、必然的に戦力も乏しくなる。
「そう、運命は、変えていくものだから。」
「未来が決まっているなんて、そんなこと、あるわけない。」
何やらうしろで優と明日香がガンダムかはたまたFSSかってな台詞をはいとりやすが・・・
彼女たちの言う運命だの未来だのってのを考えると・・・頭痛い。
当然、僕に想いを寄せてくれている少女たちにそんな優や明日香の意図が分からないはずもなく、
これまたしごく当然のように、僕の最愛の女性であるところの綾崎若菜・・・じゃなかった山本るりかはそんな二人のほうを睨み付けてこう言うのだ。
「ちょっと、最愛の女性が若菜さんっていうのはなんなのよ。」
そ、それは軽いギャグ・・・というかちょっとした言い間違いで・・・ちょっと、じゃないよなあ。
あ、あのそんな事はさておいて優と明日香に何か言うことがあったんでないの?
「ま、その件は後でじっくり聞かせていただくとして・・・。変えられない運命っていうのもあるの。この人は私の運命のダーリン!それは未来永劫ずっと変わることはないの!」
・・・えっと・・・それについては・・・反論がないわけでもないけど・・・でも・・・言えないよなあ、そんなこと。
それにしても運命のダーリンってのは、ねえ。
どっかで聞いたようなフレーズだな。
しかしそのフレーズこそが、実はこの事件のキーワードであったことを、後に僕たち、いや僕は思い知ることとなるわけである。
・・・あまり、知りたくないけど。
◇
さて、暴風あばずれ三人娘の言い合いとは無関係に、僕たちは一歩ずつ、"敵"の待つその場に向かって真っ直ぐ近づいていた。
ことここに至るまで敵の妨害らしきものはない。もしかすると、あえてそうさせて、僕たちを待ち受けて・・・
「ちょっと。」
「なに?るりか。」
「その暴風あばずれ何とかって。誰のこと?」
な、なして君はいつもいつも人の心の中を読むかね。
「もしかして、私も含まれてるってことは、ないよね?」
げ、優まで。
「ついでにいうと、あたしは?」
あ、明日香も。
「「「で?どういう意味かしら。ねえ。」」」
あ、いや、それは言葉の綾というかなんというか。
そう僕が返答に窮していたその時、
「ついたわ。」
そんなユイさんの言葉が、僕たちの間に響いた。
ああ助かった・・・のかな?
◇
「わざわざそちらからお出でいただけるとは。ありがたい話ですな。」
ドアを開け放つと同時に、その男はそう言った。
僕に掴まる若菜の手に、急に力が込められる。
おそらくこいつは、若菜を襲った男たちの一人、それも話を聞いた限り、そのリーダー格の男なのであろう。
待ち構えている、という僕の予想は正しかったようだ。
そんな様子にユイさんやゲンドウさんもさして動じていないところを見ると、
「問題ない。予定通りだ。」
ということなのだろう。
結局どちらにも覚悟のようなものがあるのだ。
敵さんにしても、一度表立って行動を取った以上、こうなるという予感はあったのだろうし、こちらにしても、敵がそう思っているということまで、ある程度予測している。
そして敵もこちらがそう思っていることを知ってて・・・ってきりがないなこれじゃ。
遅かれ早かれ、直接見える必要は結局あるのだろう。
そしてそこで、決着を付ける。
むしろそうさせるためにこれまで彼らは僕らを挑発していたのかもしれない。ふと、僕はそんな風に思った。
その結果がどちらに転ぶかはさておき、いやもしかすると結果などはじめから考えていなかったのかもしれない。
タブリスだとか、人類の再生だとかは関係なく、僕に会うこと、それが、結局のところ唯一の望みだったのだろうか。
望み?
・・・いったい誰の望みなんだよ。それは。
◇
「あなたが、黒幕?」
いかにも秘密結社の総司令部、といった感の無駄にだだっ広いその空間に、そんなキョウコさんの声が響いた。
妙な考えに没頭していた僕はその言葉ではじめて気付いた。
先に僕たちを出迎えた男、それはあくまで実行部隊のリーダーでしかなかったのだと。
黒ずくめの男たちの背後にその黒い覆面を被った謎の人物は鎮座していた。
おそらく、こいつが"監視者、と名乗るものたちのボスなのであろう。
そのボスらしき人物が、静かに立ちあがる。
黙ったまま。そう、僕らの間に話し合いの余地などはない。
戦って、向こうは僕を、こちらはタブリスを、その手に入れる。
結局、そういう単純な話なのだ。
黒覆面が立ち上がるのにあわせて、黒ずくめの男たちが仰々しく、その人物に敬いの態度を見せ、戦闘態勢をとった。
こういう人物が一人いる場合、敵として戦うのは意外に楽なことである。
絶対的な頭がいるなら、それを叩けばいい。それは戦術の基本でもある。
皆も同じ考えだったか、ユイさんやゲンドウさんたち、それにキョウコさんや優は、そいつを攻撃目標と定め、戦闘態勢を取った。
そして僕は・・・
いや戦いたいのは山々なんですけどね、若菜に真奈美に美由紀なんてあたりがね、へばりついてて・・・
恐いなら恐いでついてこなきゃいいのに。
ちなみに僕はこんな連中などは恐くはない.
僕が恐いのは・・・言うまでもなく・・・だから、これは不可抗力であって、別に僕が望んでるわけじゃないんだから・・・そんな恐い顔しないでよるりか。
そんな僕らの様子など気に止めることなく、いや実は内心かなりそんな僕らの様子に苛立っていたのだが、その黒覆面は静かに右腕を上げると、まっすぐに僕のほうを指差した。
・・・やっぱり狙いは僕なのね(泣)
でも男に追っかけまわされてもねえ、あんまり嬉しくないよなあ。
じゃあ女の子ならいいかって・・・もっとよくないね、少なくとも今は。
え?この黒覆面が男だなんでいったい誰が決めたんだ?
・・・ちょっと、それって・・・
黒覆面は僕を指差したまま、静かに言葉を発した。
「ようやく来たんだ、りゅん。」
りゅん?
そう言って仮面を外した、その素顔は・・・
終章へ続く
あとがき
るりか:で?暴風あばすれなんとかってのはいったいなんなんです?
ジェイ:い、いきなりその話題ですか。
優:あんまりじゃないかな。その表現は。
明日香:そうよ。しかもるりかや優さんはまだしも、なんであたしまで。
るりか:いや・・・明日香の場合はわりとはまってる気が・・・しなくもないんだけど。
マナ:明日香さんじゃなくってアスカさんだったらもっとぴったりですよね。
アスカ:ちょっと。なんでいちいちそこでアタシを引き合いに出すのよ!
優:で?このフレーズの意図は?
ジェイ:いや別に深い意味は・・・ないんだけど・・・。とある漫画で似たようなフレーズがあって、気に入ったんでつい・・・
マナ:正確には三人娘じゃなくって三王女、ですけどね。
アスカ:だからなんでアンタはそういう事を知ってるのよ。
マナ:そこはそれ、スパイですから。
明日香:うーん、説得力があるようなないような。
マナ:そして更に正確に言うと、ようするにフレーズが、というよりはその三王女の一人をジェイさんがお気に入りだから話題として振りたかった、と。
るりか:なるほど。で、それと私を照らし合わせて・・・
明日香:なんでそうなるのよ。
るりか:だってほら、私、明日香、優さんなら私が真っ先に来るのが当然であって。だいたい優さんは雰囲気的に言ってアルルだろうし。
ジェイ:これこれ、いきなり実名を出すでないだす。何のことだかみんな分からないでしょうが。でもまあ、るりかってのは当たってるけどね。
マナ:なんで若菜さんじゃないんですか?いつもみたく。
ジェイ:そりゃだって、あばずれってイメージは・・・若菜ちゃんには合わないでしょう。
るりか・明日香・優:あたしらには合うんかい!?
マナ:あははは・・・。で、ところでジェイさんのお気に入りって結局いったい誰なんです?
ジェイ:それはだから・・・某漫画に出てくる某国の王女様。
るりか:それじゃわからないって。だいたい三人とも王女様でしょうが。
明日香:ヒントは暴風あばずれ三王女という呼び名と、そのうちの一人がアルルという名前だということ。って、これでほとんど推測できちゃいますね。
るりか:で、ジェイさんのお気に入りはアルルではない。ってことは二者択一ですね。
ジェイ:まあそれはご想像にお任せするとして。って別に隠すようなことでもないんだけどね。
明日香:まあたぶん・・・あの娘でしょう。もう一人は本編に登場してないし。
マナ:大体ジェイさんって設定だけでいれ込むタイプじゃないですもんね。アニメでもまんがでもゲームでも、実際に本編に登場してきてそれではまるタイプだから。私と若菜さんがいい例(笑)。ってまあそれはさておくとして、それにしても・・・今回なんか無駄に後書きが長かったですね。
ジェイ:しかも・・・本編に全然触れてないしね。
新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX
の作品です。
J’s Archeのジェイさんの、
センチ&エヴァ連載シリーズの第11話公開です。
とうとう最後の親玉が......り、りゅん!?
だ、誰なんでしょう(爆)
ついに次回は、終章だそうでどうなることやら。
続きを速く読みたい方はジェイさんへ感想のメールを。