「あなた・・・方は?」
おそるおそる、と言った風に若菜が尋ねる。
既に侵入者たちの姿はない。
不利を悟ったのであろう、その撤退ぶりは迅速であった。
ようやく落ち着きを取り戻した若菜の問いに、だが二人の男女は答えなかった。
「ちと、遅かったな。」
そんな若菜の言葉を遮ったのは、若菜の祖父であった。
「おじいさま・・・」
「もう一つの目的、ですか・・・」
確か、碇ユイとかいっただろうか、その女性がにがにがしげに言葉を口にする。
「ああ。若菜も目的には違いないだろうが、真の目的は、あれじゃよ。」
「タブリス、ですか・・・」
そう呟いたのは、六分儀ゲンドウと呼ばれた男であった。
Sentimental
Midnight
第三章
「はあ。」
その頃僕は、その日何度目かのため息を吐いていた。
そんな僕の顔を、るりかが怪訝そうな表情で覗き込む。
「どうしたの?」
「あ、いや、その・・・」
別段やましいことがあるわけではない。
単なる中学校時代の女友達、というだけのことである。
けれどなぜか僕は、明日香と知り合いである、という事をるりかに言えなかった。
言ったとて、何がどうなるわけでもない。
ただコンサートを見に行く、というだけのことで、直接明日香に会うわけでもない。
けれどなぜか、気が咎めた。
あんな、別れ方をしたせいかもしれない。
最後の最後、果たせなかった約束。
一緒に見に行こうといって、結局見れなかったあの映画。
僕はあの日、約束の場所にさえ、行くことができなかった。
どこか罪悪感のようなものが、今でも僕の心の中にはある。
だから、明日香の顔を、まともに見ることすら、できない。
ブラウン管の向こうの、彼女の笑顔さえ。
結局怖いのだ、明日香と関わりを持つ、ということが。
「ほんと、何でもないんだよ。」
どこか、自分に言い聞かせるかのように、僕は呟いた。
◇
世の中というものはつくづく皮肉なものであって、避けようとすればするほどに、引き寄せられていくのが運命なのであろうか。
結局、コンサートの内容など、全く頭にも入らないまま、僕らは帰途につこうとした。
「とりあえず、夕食でも食べにいこうか?」
どこかるりかに悪いことをした、という感覚があったのか、僕はそう言ってるりかに笑顔を向けた。
「うん、そうね。」
そんな僕の笑顔を見て、やはりどこかでるりかも気にしていたのかもしれない、ようやく嬉しそうな、どことなくほっとしたような表情を、彼女は僕に向けた。
混雑を避け、裏道へとまわった僕たちは、そこで彼女に出会った。
「なに食べにいこっか。」
なんの気なしに僕のほうをるりかが振り返ったその時、
「るりか!前、前!」
ドンッ、と軽い衝撃と共に、るりかが飛び出してきた誰かとぶつかった。
「「アっ。」」
その反動で二人が倒れる。
「駄目じゃないか、前見て歩かなきゃ。」
倒れたるりかを起こしつつ、僕は謝ろうと、その飛び出してきた人物の方を見た。
それは・・・
「明日・・・香?」
サングラスで顔を隠してはいたものの、そこにいたのはまぎれもなく、星野明日香本人であった。
◇
「え?」
明日香の方もまた、驚いたような表情で僕の方を見た。
おそらくは、ファンを避けるために裏道から帰ろうとしていたのだろう。
始めは、僕のことをそんなファンの一人だと思ってか、まずそうな表情を見せていたが、すぐにその表情が別のものへと変わる。
「う・・・そ?」
それは明らかに、僕が誰であるのか、それがわかっている、そんな表情であった。
「会いに・・・来てくれたんだね。」
不意に、目にいっぱいの涙を浮かべて、明日香は僕に抱き付いてきた。
「明日香・・・」
そんな明日香の突然の行動に、僕は驚きながらも、明日香の身体を受け止める。
明日香を抱き留めると、色々な想いが交錯し、いろんな思い出が頭の中を過ぎった。
あの頃の、思い出が。
明日香をそっと抱きしめながら、僕は一番大事なことを忘れていることに、気付いていなかった。
あとがき
るりか:ちょっと、人の恋人に馴れ馴れしいんじゃない?
若菜:まあまあ、落ち着いて。
明日香:なあにが恋人よ。人がいない間に掠め取っただけでしょうに。
若菜:まあまあ、落ち着いて。
るりか:元々であったのは私の方が先なんですけどね。
明日香:なに!?
るりか:なによ!?
若菜:二人とも落ち着いて。
るりか:でもねえ!
若菜:最後にはあの方は私を選ぶのですから、関係ないじゃないですか。
るりか・明日香:アンタが一番図々しいわ!!
・
・
・
マナ:いきなり修羅場ですねえむこうは。
ジェイ:そうだねえ。
アスカ:しっかしいい根性してるわよね、この主人公も。
マナ:アスカさんが言うんだから相当なもんですよね(^^;)
アスカ:どういう意味よ(怒)
新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX
の作品です。
おなじみJ’s Archeのジェイさんの、
センチ&エヴァ連載シリーズの第3話です。
ついに再会した少年と明日香。
しかし、誰か忘れてるような......
次回はまさに修羅場に突入か!!!
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