気になる二人

第1話


 

「えーい、俺はもう帰るぞ!!やってられるか!!」

俺は、サッカー部の部室のドアを乱暴に開けると帰り支度を始めた。

「孝幸っ、落ち着けよ。気持ちは判らんでもないけどないけどさぁ。」
「そーそー、相手は名ばかりの顧問じゃねぇーか。今日一日我慢すれば当分出てこねーよ。なっなっ」
「そうだよ、エースが抜けてどうすんだよ」

俺を追いかけてきたチームメイト数人が後から部室に入ってなんとか止めようとする。

「だからってなぁ....おいチビ、こらチビ、どうしたチビ、なんでチビがレギュラーなんだってのにこれ以上耐えろっていうのか!!。」

俺の剣幕にチームメイトはあっけにとられている。

「あ……そんなに言ってた?そいつぁいいすぎ……」
「どうせ俺はチビだよ チービ!! じゃあなっ!!」

部室のドアをすごい勢いで閉めて、俺は部室から出ていった。


俺は瀬谷孝幸、高校2年生 クラスは2−1でサッカー部に所属している。
が、顧問の悪言にたまりかねて、途中でエスケープしてきたところだ。

ちくしょう、身長ばっかりは、自分でどうにもすることができない。
これほど悔しいものってないんだよなぁ。と思いながら、あたりをぶらついている。

しかし、こんな時間に帰るのは久しぶりだ。時間が早いせいか小学生らしきガキがやたらと多い。
土手の右側では、サッカー、その反対側では野球をやっている。
ほんと、ガキは元気だよなぁ。あそこの奴なんか、サッカーボール持ちながらこっちの方を向いて手を大きく振っているし。

「おじさーん、おじさーん」

なんだ、誰に向かって叫んでるんだ、あいつら?

「ちんまりした、おじさーん。うーしーろぉー」

ちんまり?なんだ?と思った瞬間に”ガツ”っと大きな音とともに後頭部に衝撃が走る。
その衝撃に思わず俺はその場にうつぶせに倒れてしまった。
痛たー・・・何が起こったんだ...

「あーあ、だから言ったのに、ホント鈍いおっさんだなぁ」

いきなりおっさん呼ばわりされて反応できるか!!!
と反論しようとしたとき

「ごめんねぇ、今の私のボールなんだ。」

と上の方から声がした。
ふと前を見ると、ふわっと制服のスカートが舞っているのが見えた。

「ごめん、大丈夫ぅー?」

心配そうにて制服姿の女の子が声をかけてきた。あれ、このスカートはうちの高校の制服じゃぁ...
そのとき風でスカートがまくれて.....あ、見えた。

「あっ……いえ……全然……平気……です…」

「よかったァ」

やっとのことその場に座り込むと長い髪の女の子の顔を覗いた。
こいつ同じクラスの飯島多佳子じゃねーか!!!!
あれ、でも違うかなぁ、飯島って確か双子じゃなかったっけ。別のクラスの妹のほうかも・・・・
俺が後頭部を押さえながら彼女のことをじーと見ていると、

「君って……いつもは見掛けないけど、ここ通り道なの?」

ん?、[君]だって。そっかこいつおれのこと知んねーんだ。とすっと、別クラスの妹の方だな。

「まーね、普段は部活でもっと遅いから。そんじゃあおたくはこの時間はいつもここなわけ?」

「うん」

うれしそうにうなずく彼女。

「ここ、小学校が近いでしょ。子供が多くって大好きなの。」

なるほど、この辺って、今の時間帯だとかわいくないガキの巣窟なワケね。
俺はあんなガキ死んでも好かんぞ。

「でも、いいわけ?子供ん中に高校生がまざってさ?」

「ぜーんぜん。子供たって体格いいもん。女なんか高校生でも助っ人にはなんないよぉ」

そのとき、野球をしている子供が彼女を呼びにきた。
「おねーちゃん。打順だよぉー」
「うんわかった。すぐ行くねぇ。それじゃあ、またねぇー。」
そう言って彼女は野球の輪の中に入っていった。彼女の打順らしい。
カキーンという音と共に、ボールははるか彼方へ飛んでいく。

「ぎゃーまたホームランかよ。バカヤロー」

守備側のガキが吠えている。

「どこが・・・・・・助っ人にもならないって?」

これが、俺と彼女との出会いだった。


翌日、教室で俺は昨日の女の子のことを考えていた。
飯島多佳子の妹かぁ。ホント元気なやつだったよな。そういえば多佳子の方はおっとりした感じのコだったもんなぁ・・・・・あれ、名前なんていうんだろう?
と、ふと後ろを向くと多佳子がうつむきながら席で何かやっている。よし!!
彼女のところまで行き、

「飯島っ。飯島多佳子さんっ」
「え?」

彼女がこっちを向いてきた。驚いたな、ホント昨日の妹とうり二つだ。

「何?瀬谷くん」
「あ?、ああ・・飯島の妹って何て名前なんだ?」
「妹ってユカちゃん?有佳子だけど....」

ふーん。有佳子てゆーんだあのコ。名前まで似てらぁ

「ところで、飯島、それ何?」

彼女の手元を見ると袋から糸のようなものと手には棒...それに...

「セーターよ。」
「へっ今頃?」

今はまだ6月である。

「わたしのペースだと、今から頑張んないと今度の冬に間に合わないんだよね」
「へーそれじゃあ、出来上がるまで半年近くもかかるんだ、それって。大変だねぇ」
「え?」

おや、なんか考え込んでるぞ。俺なんか変なこと言ったかな。

「これ・・・・・・おととしから編んでるんだけどナ」
「あ”?」

お、おととしからって....マジ?


昼休み、待ちに待った弁当タイムである。しかし、ふと、多佳子の方を見ると何やらコロッケを見つめている。

「多佳子っながめてないでさっさと食いなっ。」
「んーだって、きれいなコロッケだからなんか食べるのもったいなくって..」

あれじゃあなぁ、セーター一枚に何年もかかるわけだよな。
妹はあんなに機敏なのにさ。顔は同じでもやっぱ違うものなんだなぁ。
と、考えていたら、

「孝幸ぃー食わねぇのか?そんじゃあ、いただきぃ(バク)」

あ、おめーら、人の弁当食うんじゃねぇ、バカヤロー
あーあ、飯が半分になっちまった。クソっ。

しかし、多佳子に有佳子ねぇ……双子でもあんなに違うもんなのかな。


「あーっ今日も部活サボってるぅ」
「え?」

後ろからの声に振り向くと、元気に女の子がこっちに走ってきた。

「やっほー」

でたな、お元気有佳子。

「あんまり休むとねぇ、レギュラーはずされちゃうぞぉ」
「残念でした。今日は午前中だけなの。そっちこそ日曜だっていうのにまた野球か?」

今日は制服じゃなく、動きやすいスパッツ姿の有佳子である。

「ううん、今日はサッカーなの。そこのグラウンドで」
「ホント、あきないねぇって、コラっ、引っ張るんじゃない。」
「とうぜんだろ。ボールも避けられないような鈍いおっさんとは若さが違うぜ!!」

こいつらは、この間のかわいくないガキらじゃねーか。こいつらもいたのか。

「それってもしかして俺のことか?クソガキ」
「他に誰がいんだよ。子供はウソつかないって知らねーのか、おっさん」

ムカっ、やっぱかわいくない!!

「ごめんねー普段はいい子たちなんだけど・・・・・」

有佳子がすまなそうにいうが、ガキたちはさっさとグランドの方へ行ってしまった。

「ふーん。要するに・・・俺にだけ悪い子なワケね。上等じゃん。」

俺もグラウンドへ走り、さっきのかわいくないクソガキからボールを奪う。
向こうも懸命にボールを奪おうとするが、簡単には渡しはしないぞ。

「だからぁ、鈍いおっさん相手なら」

ボールをトラップし、相手を翻弄する。

「こんなボールかるーくとれるだろ?」
「く、くそぉ」
「あれ?とれない?なぜかなぁ」
「そっちは高校生じゃんかっ」

ふっさっきと立場が逆転したな。

「お前等もボーッと見てないで手伝えよぉ!!」

クソガキが仲間に叫ぶが、こちらは俺達のボールの奪い合いに見とれている。
有佳子だけは声をこらえて笑っているようだが。
少ししてボールをクソガキにパスして、笑っている有佳子の所へ戻る。

「やーねー、男の子って、何だカンだ言ってたくせに自分が一番のりやすいんだから」
「ばかやろー」

向こうでクソガキが吠えている。

「わははっ思いっきりいじめてしまった。性格悪いかんね、俺も」
「どうだか....ね」
「えっ」
「だって子供なんて走ればあっさり振り切れるのに、一度も走って逃げなかったじゃない。」
「うっ」
「性格の悪い人はわざと接近戦なんてしないと思うなぁ」
「それは・・・・」
「ねっ!」

有佳子は微笑みながらこちらに顔を向ける。

こいつは・・・びっくり。
女の子なのにそんなことまでわかるワケ?

「次ーっわたし、わたしやる。まぜてまぜてぇ」

有佳子がグラウンドに向けて走っていく。

うーん。ただ元気なだけの女の子じゃないんだなぁ。

「よーし、俺も入るぞ。勝負だ!!」

俺は再度、グランドへ走っていった。

 

第2話へ続く



あとがき

はじめまして、ユーリです。
今回はじめて、SSらしきものを書いてみました。

実際には、この作品は私の好きな某漫画のノベライゼーションなので、
ストーリ的には知っている方もいるかと思いますが、おてやらわかに。
全3話になる予定です。


ユーリさんからの、オリジナル系小説です。

私もこの原作が好きなのでお楽しみにしています。

ユーリさんへの感想メールは、私当てに下されば転送します。


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